森元総理のホンネと「浮動票」

かつて、森喜朗、という総理大臣がいた。
いつの間にか突然首相になって、山ほど問題発言を残して、首相の座を去った。
今では東京オリンピックの組織委員会会長とかに、これまたいつの間にかなってて、やたらと不機嫌そうに相変わらず放言していると思ったら、何を思ったか坊主にした御仁だ。
本人曰く、反省したらしい。何を反省したかは不明である。

森総理、最大の問題発言

森氏が総理時代、様々な発言が問題視された。
あまりに多すぎて、今となってはボクも全部覚えている自信はないけど、とにかく凄かったのが選挙に関する発言だった。今でもよく覚えている。
『(選挙に関心のない有権者は)寝てしまってくれればいい…』
選挙で選ばれる政治家という立場のヒトが、まるで自らの存在意義を否定するかのようなこの発言は、ある意味画期的である。
でも、これは、与党(というか自民党)のホンネである。
森氏は失言が多かったが、失言の多い政治家=ウソのつけない政治家、と言えなこともない。
つい言ってはいけないホンネを口にしてしまうから、失言なのだ。
『寝てしまってくれればいい』とは、言い換えれば、『選挙に来るな(行くな)』ということになる。

「固定票」と「浮動票」

選挙における票には、「固定票」と「浮動票(スイングボート)」の2種類がある。
「固定票」というのは、熱心な支持者のことである。
何があっても○○を支持する!投票するぞ!という人々、と考えればいいだろう。
支持する理由は様々で、例えばある政策が自分の会社の利益に密接に結び付くと考える経営者(と従業員)とか、宗教上の理由とか、(多分一般のヒトにはほとんどいないだろうが)自分の思想信条に特定の候補者や政党が近いと感じている、とか、まぁイロイロ。

一方、「固定票」でない一般の有権者は、「浮動票」を持っているということになるが、この人たちは特定の支持政党もなく、政治への関心も一般的に薄い、と言われている。
つまり、フツーのヒト、なのだ。
森氏が(間接的に)来るな、と言ったのは、この「フツーのヒト」に対してで、それにはもちろん理由がある。

「浮動票」は、多くの場合、与党に不利な動きをする。考えてみりゃ当然のことだ。
現時点で勝ってる(=多数派)から与党、と呼ばれていて、前回の選挙に勝ったから与党なワケだ。そして、そういう勢力は、大体、選挙に強い。強いからこそ与党なワケだが。
では、なぜ選挙に強いのかとゆーと、絶対選挙に行く!という人々に支えられてるから。
絶対選挙に行く人の多くは、自分のビジネスとか商売上とかの主に金銭的な理由で、自分の都合のいい勢力に、勝ってくれ!と、かなり強く願っている。
なんせ自分の生活がかかっているのだから、マジですよ、コレは。
ってなカンジの「固定票」に対し、森氏が来てほしくなかった「浮動票」は、生活がかかってない(と思い込んでる)ので、選挙に行くことにそれほど熱心ではなかったりする。
そりゃ、なかなか勝てませんわ。

なにが問題かとゆーと…

ここに書いたことは日本に限った話ではなく、万国共通。
そして、「固定票」がまるで悪い、と感じるかもしれないが、それはそうではない。
更に、自分の利益のために投票することも、全然悪いことじゃない。
それが当然のコト。とゆーか、そうすべき。それが選挙。

問題は、「浮動票」がほとんど棄権してる、選挙に行かない、という事にあって、その結果、税金の使い道が一部の人々に偏ったり、特定の人に対してのみ、政治が行われてしまうことにある。
投票率が比較的高い国=「浮動票」が元気な国では、与党に反対票が集まり、次の選挙で与党が負けることもしばしば。政権交代、ってヤツだ。
日本は投票率が低く、その結果、政権交代が少ないので「選挙の常連」に利益が集中してしまう。一部の層に偏った世の中。フェアじゃない。

選挙に行かない、とは、そういうことなのだ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする